こんにちは、FF7マニアのユウです!
今回はFF7の公式小説「Traces of Two Pasts」について語っていきます。
この小説の主役は表紙からもお察しの通り、FF7を代表するダブルヒロインであるティファとエアリスです。
「Two Pasts」というタイトルそのままですが、本作ではこの二人の過去について綴られています。
小説全体で見ると、前半部分が“ティファ編”で、後半部分が“エアリス編”として構成されています。
ティファ編では、ティファが5歳前後から18歳までの出来事が、エアリス編では、エアリスが7歳から14歳までの出来事が描かれています。
平たく言えば、幼少期から思春期までという感じですね。

主役はティファとエアリスだが、FF7の物語設定を理解するために役立つ書籍でもあるぞ!

ゲーム本編では未登場のティファ殿の母親とか、ミッドガルでの労働事情とか、FF7の世界観を補完している箇所も多いのであります!
【FF7】奥深いストーリーを理解するために役立つ書籍5選+α
本作の見所は、何と言ってもティファ&エアリスの視点での心理描写です。
ティファにとって、クラウドはどのような存在なのか?
エアリスにとって、実母や養母はどのような存在なのか?
このようなゲーム本編でも触れられている内容について、ティファ&エアリスの“回想”という形で、さらにもう一歩踏み込んだ描写がされています。
小説という媒体ならではの緻密さと言いますか、とにかく二人の心情について細部まで描かれているのです。
故郷と父親を一夜にして失い、心身ともに過酷な生活を余儀なくされたティファ。
実母から受け継いだ古代種の血によって、養母との関係性に悩むエアリス。
その他にも、謎に包まれていた【クラウドの父親】について言及されていたりなど、この小説でしか触れられないレアな情報も多いです。
詰まるところ、ティファ&エアリスのみならず、この二人の周辺人物に関する情報量も半端じゃやない訳ですよ。
よって、FF7マニアの筆者はここに断言します。
この小説を読まずして、ティファ&エアリスのファンを名乗る資格は無いと!!
…というのは流石に冗談ですが、ティファ&エアリスが好きならば読んで損はしない内容です。
そんな訳で、本記事ではこの「Two Pasts」の見所について語っていこうと思います。
ティファ編の見所&感想

ティファ編の時間軸は「FF7リバース」の2章(=グラスランド編)に相当する時期である
「ねえねえ。ティファはこういうの、慣れてるの?」
エアリス・ゲインズブールが前方に広がるグラスランドの草原を指差して言った。
知り合って日が浅いのにまるで旧知の友人のようだ。
引用:FINAL FANTASY Ⅶ REMAKE Traces of Two Pasts 8ページより
ティファ編は、時系列で言うとFF7リバースの2章における裏話といった位置付けです。
クラウド一行がグラスランドエリアを旅している最中に、ティファが自分の過去についてバレットやレッドXIIIに自身の過去を語るという体で話が進んでいきます。
バレット&レッドⅩⅢからの質問や指摘に対して、ティファが受け答えをするという形ですね。
故郷で生活していた頃の出来事
ザンガン流格闘術を学ぶようになった経緯。
ミッドガルに移住してからの苦労。
どれもこれもティファの人格形成に関わった重要なエピソードばかりであり、ティファがどのような過程を経て心身ともに成長したのかを深く知ることが出来ます。
それでは、ティファ編の見所について筆者の感想を含めて語っていこうと思います。
幼少期のティファとクラウド

ティファとクラウドは「幼馴染」ではあるが「仲良し」ではなかった
「クラウドは本当に美しい顔をしている」
母親の言葉を思い出す。
その言葉は、こう続く。
「ママは、英雄のセフィロスよりもずっと綺麗だと思うな」
当時若き英雄として事あるごとに紹介されていた神羅カンパニーのソルジャーと比較してクラウドを褒めたのだ。
(中略)
クラウドが相手だと緊張してうまく話せなくなるのは、好きだからではない。
憧れているからだ。
彼は手の届かない、美しいもの。
あの星のように。
引用:FINAL FANTASY Ⅶ REMAKE Traces of Two Pasts 22ページ
故郷で過ごしていた頃、ティファにとってクラウドはどのような存在だったのか?
…ということについて本作ではティファの視点で語られている訳ですが、これが中々興味深い。
小説内の描写を見た限りだと、ティファにとってクラウドは給水塔でのイベント以前から何かと気になる存在だったようです。
ただし、当時のティファが興味を抱いていたのは、クラウドの“内面”ではなく“外見”の方です。
クラウドは幼少期から整った顔立ちをしていたらしく、周囲の大人達からも一目置かれていたようです。
実際のところ、ティファの母親であるテア・ロックハートも、クラウドのことを「綺麗な顔をしている」と評しています。
ティファ自身もクラウドが美形なのは認識しており、そのせいで“クラウドと話すとドキドキする”と述懐しています。
当時のティファとクラウドの関係性と照らし合わせると、これは“クラウドが好きだから”というよりも“イケメンの少年と話すこと自体がドキドキする”といった感じでしょうか。
まあ、現実の世界でもよくありますよね。
美形の異性と話す際、特に理由もなく緊張してしまう…みたいな。

当時のティファは現実の世界で言うならば小学生くらいの年齢だから、年相応の反応かもな…

ティファ殿の“若さ”あるいは“幼さ”が如実に表れているエピソードであります!
自分は、クラウドのことを好きなのだろうか?
自分はクラウドに対して、特別な感情を抱いているのか?
その“特別な感情”とは、具体的にどういったものなのか?
そもそも異性を好きになるとは、どういうことなのか?
…といった具合に自問自答するティファの姿は、まさに思春期の少女そのものです。
付け加えると、恋愛感情の所在についてはティファ自身も戸惑っているような描写があります。
自分の感情を、自分でも上手く咀嚼できず、言語化も出来ない。
何と言うか、この辺は甘酸っぱい感じがしましたね。
後述するエアリス編にも共通することですが、かつてはティファも子供であり、少女であったことが伝わってくる一幕です。

“若い”って、本当に素晴らしいな!

誰もが持っていて、誰もが失うもの…
それが“若さ”であります!
ザンガンとの出会い

「格闘家」として優秀なのだろうが、「大人」としては疑問符が付く行動に事欠かないザンガン師匠
「私はローシャ・ザンガン。さあ、握手しよう」
ティファは勢いに負けてつい手を出した。
「痛っ!」
ザンガンが強く手を握っている。
そんなことをする大人がいるだろうか。
「嫌っ!」
「すまないすまない」
ザンガンは慌てて手を放した。
しかしすぐにティファの両方の二の腕をがっしりと掴む。
「ほほう!」
ティファは足がすくむ。
思ったより危険な状況ではないか。
「ふくらはぎもいいかな?」
良いはずがない。
「やめてください!」
引用:FINAL FANTASY Ⅶ REMAKE Traces of Two Pasts 28ページ
FF7プレイヤーならば知っての通り、ティファはザンガン流格闘術の使い手です。
しかし、ティファとザンガンの出会い方は決して良い形ではありませんでした。
本作を読めば分かることですが、初登場時のザンガンは“怪しいオジサン”そのものです。
読者視点ではザンガンが後にティファの師匠になると分かっているため、この場でティファが暴行を受けることは無いという謎の(?)安心感があります。
…が!!!
プレイヤー目線での前情報を除くと、初登場時のザンガンは変質者にしか見えません。
出会い頭にティファの腕を触り、今度は足まで触ろうとする中年男性。
当然ながら、ティファからの同意などは一切ナシ。
補足しますけど、この時のティファは12歳です。
面識のない12歳の少女の身体をベタベタ触るなど、ぶっちゃけセクハラを通り越して痴漢行為でしかあません。
もしこれが現実の世界だったら警察に通報され、一発で逮捕されるような案件ですよ。

全く、羨ましいけしからん男だな…!!

現実の話をフィクションの世界に持ち込むのも妙な話ですが、こんな行為は断罪されるべきであります!
もちろん、ザンガンとしては悪意があってこのような行為を働いた訳ではありません。
前途有望な若者と出会った際には、身体に直接触れて、秘められた格闘術の素質について確かめたい。
そのような格闘家ならではの欲求(?)に基づいての行為です。
実際、FF7リバースでもクラウド(※正確にはザックス)に対して同じことを行っています。
つまり、これは相手の年齢や性別を問わずに行っている訳です。
要するに、これはザンガンなりの挨拶みたいなものなのでしょう。

素質がありそうな若者の身体をベタベタと触るのが大好きなザンガン

触ることで“筋肉の質”が分かるのはザンガン独自の特殊能力なのかもしれない
このような出会い方をした経緯と相まって、あろうことかティファはザンガンのことを「人買いではないか?」などと疑う始末。
その一方で、ザンガンはティファの素質を見抜き、格闘術を学んでみないかと勧誘してきます。
不信感を拭いきれず、即答は避けたものの、結局のところザンガン流格闘術を学び始めるティファ。
結果的に、ザンガン流格闘術はティファの心身の成長に好影響をもたらします。
詰まるところ、戸惑いつつもザンガンの誘いを受け入れたことが、ティファにとっては人生の分岐点になったと言えます。

出会い方はともかく、ティファの素質を見抜いたザンガンは慧眼の持ち主だと言えるだろう
実はニブルヘイム時代のティファって、それなりに自分勝手なところがある“お嬢様気質”だったんですよね。
良くも悪くも“箱入り娘”と言うか、ティファ自身にその自覚はないですけども、多少の我儘なら許されると思っていた節もありますし。
裕福な家で大切に育てられた一人娘であり、同年代の少年たちがチヤホヤしてくれる影響と相まって、自尊心が悪い方向に肥大化していくときた。
自分は批難されることが無いばかりか、むしろ優先されるべき存在だと当たり前のように信じている。
早い話、ザンガンと出会って心身を鍛え始めるまでは、あまり健全とは言えない精神性の持ち主だった訳ですよ。
クラウドの母親であるクラウディアなんかは、ティファの精神性に対して釈然としない感情を抱いている様子もありますし。
自分の中にある、精神的な驕りや醜さ。
自分を特別視し、他人を軽視する価値観。
小説内のザンガンの言葉を引用するならば「君の弱さ」といったところですね。
ザンガン流格闘術を学ぶ過程で自分自身を見つめ直し、内省する習慣を身に付けていくティファ。
“健全な精神は健全な肉体に宿る”という諺がありますが、まさにこの言葉を地で行くような感じです。
ティファという人間の礎を築いたという意味では、このザンガン流格闘術の存在は非常に大きいことが窺えます。

FF7で屈指の人格者と呼ばれているティファだが、その健全な精神性はザンガン流格闘術によって培われたという訳だ!

原作版FF7では影が薄かったザンガン殿ですが、この小説によって大きく株を上げましたな!
FINAL FANTASY VII REMAKE Traces of Two Pasts(Amazon)
ミッドガルでの治療費(=借金)返済生活

FF7本編でティファが生活していたのは七番街スラムだが、ミッドガルに移住した当初は八番街スラムに住んでいた
ダミーニは途方もない金額を告げた。
背筋が冷たくなるのを感じた。
「お金……ありません」
「でしょうね」
ダミーニは窓の外を見やって黙る。
「住むところもないのよね」
なんということだろう。
意識を失っている間に人生が大きく変わってしまった。
しかも想像さえしたことのない、良くない方へ。
引用:FINAL FANTASY Ⅶ REMAKE Traces of Two Pasts 82ページ
ニブルヘイム事件の際、セフィロスに胸を斬られて重症を負ったティファ。
その後は、師匠であるザンガンによって救出されたティファ。
ザンガンによってコレルまで運ばれ、医師であるシロンから治療を施されたものの、容態が安定しないとの理由により、ミッドガルに運び込まれたという経緯が本作で明かされました。

FF7リバースの6章でコレルを訪れた際、シロンが当時の出来事について言及する場面がある
ニブルヘイム~コレル~ミッドガルまでの移動過程において、意識不明の重体のまま過ごしたティファ。
様々な治療の甲斐あって一命をとりとめ、ようやくミッドガルの病院で目を覚まし、リハビリを行いつつ体力を取り戻し、退院するまでの過程も詳しく描かれているのですが…
すぐには支払えないほどの高額な治療費
…が、ティファの悩みの種となります。
セフィロスの凶行によって、一夜にして全てを失ってしまったティファ。
持ち金なんて、当然ながらゼロ。
住むための家もない。
頼れる友人や知人もいない。
退院したとはいえ、胸の傷だって完治した訳ではない。
15歳にして突如として始まった、まさに“人生ハードモード”とでも呼ぶべき怒涛の展開。
現実の世界で例えるなら、絶望して死にたくなるようなレベルの状況に陥ったという訳ですよ。
実際のところ、目の前の現実を直視できなくてティファも泣いているし。
しかし、環境はどうであれ、生きていかなくてはならない。
生きるためには、自分で働いて、金を稼がなければならない。
…という訳で、ティファと同じくザンガンの弟子であるラケスの伝手で、八番街スラムの饅頭屋での仕事を紹介してもらい、そして同じく八番街スラムのコンテナ型住居で新生活を始めたティファ。
経済的に苦しい生活を余儀なくされたものの、ザンガン流格闘術によって身体だけではなく精神も鍛えられていた賜物なのか、ティファなりに現実と向き合い、そして前向きに生きていこうと懸命に努力する姿が描かれています。
ここで注目すべきはティファの労働事情なのですが、なんと休みは水曜日だけという中々のブラック環境で働いています。
つまり、週休は1日だけの職場。
有給休暇や傷病休暇なんて、当然ながらナシ。
労働の報酬は、売れた饅頭の個数に応じた歩合制。
そんな日給の目安は、たったの60ギル。
小説内では、八番街スラムのコンテナ型住居の家賃が日額15ギル、公共シャワーの使用量が1回3ギル~5ギルであること述べられています。
これらの情報と照らし合わせると、当時のティファがいかに過酷な環境での生活を強いられたのかがよく分ります。

こうやって字面を眺めると、人生について絶望するだけの威力があるな…

作中では公共シャワーの管理人から「こんなスラムの底に流れてくるなんて」と言われてティファ殿が落ち込む場面もあります…
FF7本編では、七番街スラムにて生活している姿のみが描かれていたティファ。
裕福とは言い難いが、貧困で喘いでいるという程でもありませんでした。
しかし、ミッドガルに移住した当初のティファは、文字通りの“貧民窟”で生きていたという訳です。

ティファの中で自衛や自立の意識が芽生えたのはスラムの環境によるところが大きい
そんなティファも16歳、17歳、18歳になるに従い、徐々にスラムでの生活にも慣れ、過去を振り返って思い悩む頻度も減っていきます。
さらに、八番街スラムの饅頭屋で働く過程でジェシー、ビッグス、ウェッジと知り合い、さらにはFF7リメイクにも登場したマーレの伝手で、七番街スラムのセブンスヘブンでも働くようになります。

マーレは初対面の時からティファのことを気に入り、何かと世話を焼いてきたことが本作で語られている
水曜日以外は八番街スラムの饅頭屋で働き、水曜日だけは七番街スラムのセブンスヘブンで働くという忙しい日々。
週休0日という、現実の世界ならば過労死上等とでも言わんばかりの生活。
いくら若いとはいえ、体を壊すこともなく、そして鬱病を患うこともなく、治療費の完済という目標に向かってひたすら突き進んでいくティファ。
そのタフな肉体と精神には、一介の読者として敬服するばかりです。

本作を読めば分かることだが、ティファの仕事観や金銭感覚は八番街スラム時代に培われたというのが興味深いポイントだぞ!

“人生ハードモード”という逆境が、ティファ殿を逞しい社会人へと成長させたであります!
バレット&マリンとの出会い

本作ではティファとバレット&マリンとの出会いも描かれている
マリンが怯えて見ている。
ティファはバレットに向かって小声で言う。
「あなたがいると、他のお客さんが来ないの。みんな怖がって」
バレットはまた唖然とする。
「そりゃ悪かったな。いや、ホント悪かった」
「父ちゃんを怒らないでえ」
またマリンが言った。
このふたりは一体どんな人生を歩んできたのだろう。
引用:FINAL FANTASY Ⅶ REMAKE Traces of Two Pasts 169ページ
八番街スラムでの生活をし始めて3年が経った頃、先述した通りティファは七番街スラムでも働き始めます。
その職場は、FF7プレイヤーならばご存知のセブンスヘブンです。
ただし、ティファが七番街スラムを訪れた発端は、友達となったジェシーがアバランチ関連の諍いで音信不通になったので、その行方を捜すためだったんですよね。
そのタイミングで奇妙な縁と偶然が重なり合い、マーレからセブンスヘブンで働くことを打診されたという訳です。

七番街スラムでは「地主」みたいなポジションなのか、随分と顔が広いマーレ
そして、これまた偶然ですがミッドガルへと流れ着いたバレットもセブンスヘブンを訪れていました。
この時のバレットは、アバランチに加入するための手掛かり求めて七番街スラムに来たという感じですね。
当然ながらマリンも一緒です。
よって、時系列を整理するとティファは18歳、バレットは33歳、マリンは2歳ということになります。
即ち、ティファとバレット&マリンが出会ったのは本編から2年前だったということが本作で明かされました。

バレットが神羅に故郷を焼き払われた時点でマリンは0歳だから、バレットは2年ほど放浪生活をしていたということになるぞ!

右腕を失った上に、生後間もない乳児を連れて2年も流離ってきたとは…
バレット殿もティファ殿に負けず劣らずの“人生ハードモード”ですな…
FF7本編では強固な信頼関係で結ばれているティファとバレット。
しかし、この二人の出会いは決して良いものではありませんでした。
実はですね、セブンスヘブンのテラスに居座っているバレットに対して、ティファが説教するんですよね。
店に居座られたこと自体よりも、面識のない幼児のことを不憫に思ったが故の説教という感じですね。
親ならば、娘には清潔な服を着せてやれ。
それだけではなく、髪も身体も洗ってやれ。
…といった趣旨の説教を、目の前の大男に対して堂々とブチかます訳ですよ。
この時のバレットは金もなければ家もないという、ティファ以上に凄惨な状況に置かれています。
だから、ティファが言うように、娘にまともは服を着せてやれだとか、寝床を用意してやれだとか、そういったことを言われても現実的には困難なんですよね。
そうは言っても、ティファとしてはバレット側の事情など知る由もない。
そこに加えて、目の前で“幼児が不憫な生活を強いられている”という事実が看過できなかったようで。
スラムで生きている人間には、それぞれ事情がある。
だからこそ、深入りは禁物。
お節介には、限度が必要。
そんな不文律が頭の中を過ったものの、敢えてバレットの正面に立って説教するティファ。
この場面でのティファの物言いは、読んでいる側としては非常に清々しいです。
正味な話、ここでティファが言っていることは至極真っ当なことです。
バレットもマリンに対して親としての責任を全うしていないという自覚があったのか、この場ではティファの説教を甘んじて受け入れています。
本作で一番の見所は、ティファがバレットに説教する場面なんじゃないかなと筆者は思っています。
かつては“箱入り娘”として裕福な家庭で育ったティファ。
そんなティファが、自らの意志で格闘術を学び、さらに社会の荒波に揉まれて心身ともに鍛えられた。
そして、自分よりも弱い存在を気遣い、自分よりも年上かつ屈強な存在に対して、物怖じせずに相対するまでに至った。
この一連の流れを経て“説教”という行動を選択した辺りに、この小説全体を通じてのティファの人間的成長が凝縮されているように思えるのです。

説教の口調としては、FF7ACでティファがクラウドに対して「逃げないで」と諭す時のような感じだな!

普段は温厚なティファ殿が強い口調になるからこそ、読者の側としては胸に迫るものがあります!
FINAL FANTASY VII REMAKE Traces of Two Pasts(Amazon)
エアリス編の見所&感想

エアリス編はこの場面でのやり取りに関係している
エアリス・ゲインズブールは連絡船第八神羅丸の中にいた。
仲間たちと同じく、神羅軍の兵士の服を着ている。
初めての海、そして船だった。
引用:FINAL FANTASY Ⅶ REMAKE Traces of Two Pasts引用:210ページ
エアリス編は、FF7リバースで登場した第八神羅丸での舞台裏という位置付けです。
ゲーム的なこと言うと、FF7リバースの第5章の冒頭に該当する場面ですね。
密航の最中、船倉にてエアリスが自分の過去についてティファに語るという体で話が進んでいきます。
ゲーム内の描写だけを見ると、エアリスとティファが楽しそうに会話しているように見える反面、会話の内容自体はイマイチ判然としません。
プレイヤー目線だと中途半端かつ断片的にしか伝わってこない会話内容が、本作では余すことなく語られている…といった感じです。
それでは、エアリス編の見所について語っていこうと思います。
実母との逃避行

本作ではイファルナが死亡するまでの一部始終が詳細に描かれている
「エアリス。ちょっと冒険してみない?」
毛布の向こうからイファルナが囁いた。
「何をするの?」
エアリスも真似て、小さな声で訊いた。
「ここから出るの。出て、外の空気を吸いに行くの」
「えっ?」
外の世界には、憧れと恐怖があった。
「懐かしいなあ」
母親の、その感覚がエアリスにはわからない。
しかし、声に涙が混じっているような気がした。
引用:FINAL FANTASY Ⅶ REMAKE Traces of Two Pasts 214ページ
生後間もなく、実母共々、神羅ビルへと連れ去られたエアリス。
その後は宝条によって神羅ビル内で軟禁されながら育ったため、エアリスには外出の自由がありませんでした。
しかし、エアリスが7歳になった時、転機が訪れます。
過酷な実験生活によって衰弱していた実母が、後述する「ファズ」という名の男性研究員の協力を得て、神羅ビルから脱出することを画策します。
FF7ファンの間では「イファルナとエアリスはどのようにして厳重な警備を掻い潜って伍番街スラムまで逃げたのか?」ということについて、長年に渡って議論されてきました。
そんなイファルナ&エアリスによる逃避行の一部始終について、公式から回答が提示されたという訳ですね。

ここで登場する「ファズ」とは科学部門の社員なので、要は宝条博士の部下であります!

イファルナが死亡してから7年後、性的な意味でエアリスを襲うほどのストーカーになるヤバい男でもある…(※詳しくは後述)

作中の描写から、ファズの容貌は「ウェッジを不細工にした感じの男」だと勝手に想像している(※筆者私見)
イファルナに連れられるまま、状況を理解できないまま神羅ビルから抜け出し、ミッドガルのスラム街へと移動していくエアリス。
しかし、この逃避行の最中もイファルナはどんどん衰弱していきます。
当初はファズの手引きに従って、参番街に身を隠す予定だったエアリスとイファルナ。
しかし、イファルナはファズに対して色々と思うところがあるらしく、何と参番街には向かわず、四番街を経て、そして伍番街へと辿り着きます。
このファズという研究員はイファルナに惚れていて、逃避行の前から何かとイファルナに便宜を図っています。
例えば、宝条には内緒で薬(たぶん鎮痛薬)をイファルナに与えてくれたりとか。
他には、イファルナが実験の影響で体力を著しく消耗した時は、ファズが抱きかかえてベッドに移してくれたりとか。
そして、作中ではイファルナもまたファズの恋心を知っているかのように描かれています。
よって、この逃避行の流れを読み解いていくと、イファルナがファズの恋心を利用して神羅ビルから脱出したという見方もできます。

読者の目線で見ると、ファズに対するイファルナの態度は意外と強かで興味深い…

原作版FF7では描かれていなかった、イファルナ殿の新しい側面であります!
想定外のトラブルはあったものの、無事に神羅ビルを脱出できたイファルナ&エアリス。
しかし結局のところ、FF7プレイヤーならば知っての通りイファルナは伍番街スラムにて絶命してしまいます。
そして偶然その場に居合わせたエルミナによって、エアリスはゲインズブール家に引き取られ、新しい人生を歩んでいくことになります。

悲愴な面持ちでエアリスをエアリスを託したイファルナ

その後、イファルナの遺体は神羅に回収されるのであった…
この逃避行の件は、イファルナが本当に気の毒で仕方ないんですよね。
イファルナは原作版FF7の頃から不幸なキャラクターとして描かれていましたけど、本作の発売よって不幸の解像度がより上がったという感じです。
単純な不幸度で言ったら、娘より上かもしれません。
最後の純血古代種として、アイシクルロッジで静かに生活していたイファルナ。
神羅を辞めたガスト博士と出会い、彼との間に娘が生まれたと思いきや、そこからの先の人生は急転直下そのもの。
宝条率いる一団によって、ガスト博士は死亡。
生後20日の娘と共に、神羅ビルに連れ去られた挙句、一切の自由を奪われる始末。
極めつけに、宝条からは実験動物のように扱われる日々。
小説内の描写を見ると、奇妙な注射を打たれたり、皮膚を切り取られたりするのは日常茶飯事だったようなので、人間としての尊厳なんて皆無に等しい状態だったことが窺えます。

忘れられがちだが、目の前で夫を殺されたという点もイファルナの不幸度アップに一役買っているな…

あまりにも惨い仕打ちであります…
もうね、これを「不幸」と言わずに何と言うのかって話ですよ。
FF7では、不幸な結末を迎えた主要キャラクターの身内が他にも大勢います。
具体例を挙げるなら、ダインとか、クラウディアとか、セトとか。
しかし!!!
イファルナの不幸度は、彼らの比ではないくらい凄まじい。
だって、イファルナの人生で幸福だった時期って、殆ど存在していないですからね。
それこそ、イファルナが幸福だったのは娘が誕生した前後くらいだったのではないかと思われます。
そんな波乱万丈な人生の果てに、見知らぬ他人にエアリスを託さざるを得ないような状況下で逝った訳ですから。
とにかく、不幸。
ただただ、不幸。
その一言に尽きるという感じです。

イファルナの遺体は宝条によって好き勝手に解剖されており、死者としての尊厳さえも奪われたと言える…
義母との新生活

エアリスと出会った当初、エルミナもまた辛く苦しい状況だった
エアリスにあてがわれたのは、この家を建てたガブリエル・ゲインズブールが二ヶ月前まで療養生活を送った部屋だった。
綺麗に片づいて、清潔な匂いがした。
死の気配はまったく感じなかった。
「あんまりいい気分じゃないと思うけど、他に部屋はないんだ。いや、あるにはあるけど片づけないとね」
エルミナは申し訳なさそうだった。
しかし、エアリスは何も気にならなかった。
それどころか部屋に歓迎されているような気さえした。
引用:FINAL FANTASY Ⅶ REMAKE Traces of Two Pasts 251ページ
実母との死別を経て、ゲインズブール家に引き取られたエアリス。
…と言っても、エアリスとエルミナは最初から“親子”として暮らしていた訳ではありません。
本作を読めば分かることですが、エルミナはエアリスに対して“一時的に面倒を見る”といった姿勢でしたからね。
そんな二人だからこそ、衝突と和解を繰り返しながら“親子”になっていったという感じです。
そして“親子”となった以降も、四六時中“仲良し”という訳でもない。
元々は血の繋がっていない他人だから、ある意味では当然の帰結なんですけどね。
でも、だからこそ尊い。
血の繋がらない親子だからこそ、エアリスとエルミナの間には絆がある。
その絆とは、ある日突然生まれた訳ではなく、時間をかけて育まれていった。
その過程が、この本作では詳しく描かれています。
実の親子ではないことについてエアリスが葛藤したように、エルミナもまた悩み、苦しんでいる節があります。
エルミナもエルミナで、実はエアリスを引き取った時は辛い状況だったんですよね。
ゲインズブール家の家業が上手くいっていなかったりとか。
夫であるクレイ・ゲインズブールが音信不通だったりとか。
そんな中で7歳の子供の面倒を見るというのは、並大抵の苦労ではなかったはずです。
しかも、エアリスを“娘”として育てることを決心した矢先に夫が戦死したことが判明し、憔悴してしまいますし。
でも、そういった苦労を経たからこそ、エアリスとエルミナの二人に親子の絆が芽生えたのだと思うと、胸に響くものがあります。

「クレイは星に帰った」と言うエアリスと、「あの人が帰るのはこの家だ」と言うエルミナによるやり取りは一見の価値ありだぞ!

FFらしい人間ドラマがゲインズブール家の中で繰り広げられているであります!
実の親子でも、血の繋がらない親子でも、衝突を繰り返すのは世の常です。
しかし、後者には“どうせ血が繋がっていないのだから”という諦観の感情が付きまとう。
それはエアリスとエルミナも同じであり、だからこそ難しい部分がある訳で。
実際、エアリスが13歳の頃は反抗期の真っ最中といった感じで、エルミナに対してかなり酷いことを言っています。
この点についてはエアリス自身も反省しておりまして、話し相手のティファに“反抗期をこじらせていた”と述懐しています。
FF7のみならず、FFシリーズ全体を通して屈指の人気を誇っているエアリス。
そんなエアリスにも、聞き分けのない子供時代、生意気な少女時代は存在していたということですね。
FINAL FANTASY VII REMAKE Traces of Two Pasts(Amazon)
ゲインズブール家の生業

スラム街にしては立派な外観のゲインズブール家だが、実は明確な理由があった
「メグロさん、帰ってから、ゲインズブール家の仕事のことを教えてもらったの。ガブリエルは、建設現場で働く人たちのまとめ役。手配師って、呼ばれてる」
引用:FINAL FANTASY Ⅶ REMAKE Traces of Two Pasts 265ページ
FF7本編では触れられていない設定ですが、ゲインズブール家はミッドガルでの建設関係の仕事を取り仕切っている立場だった事が小説で明かされました。
具体的なことを言うと、エルミナの義父にあたるガブリエル・ゲインズブールが建築労働者の為に神羅カンパニーと交渉して、適切な賃金をもらえる体制を作ったのだとか。
このガブリエルが相当なやり手だったようで、なんとプレジデントともビジネス上の関係がある人物であったことが小説内で述べられています。
その影響力は大きく、ガブリエルの死後も、義理の娘であるエルミナに対して親身になって接してくれるスラムの住民が大勢いることが示唆されています。
このガブリエルについて、小説内ではエアリスがティファに「悪くないコルネオ」と表現しています。
詰まるところ、コルネオから悪党成分を抜いたような感じの人物(=善良なスラムの顔役)だったのでしょうね。
FF7本編の物語に直接は関わらない情報ですけど、スラムの勢力図を推し測る上では結構面白い情報だったりします。
このガブリエル・ゲインズブールに限らずですが、本作にはFF7の世界観を補完するような情報が散りばめられており、そういった意味でも一読してみる価値のある書籍です。
FF界の新生ストーカー・ファズ

FF7リバースの5章にて名前だけが登場した「ファズ」

小説内での描写から、筆者はファズの容貌を「ウェッジを不細工にした感じの醜男」をイメージして脳内補完している
「参番街の家、まだそのままなんだ。ずっと家賃を払って、借りてる」
「そうなんだ」
「一緒に暮らさないか?」
今、何を言われたのだろう。
どういう意味だろう。
「ファズとわたしが一緒に暮らすの?」
返事はなかった。
「ファズ?」
おそるおそる立ち上がるとファズがすぐとなりにいた。
「ああ。一緒に暮らそう、イファルナ」
ファズが笑った。
目の中の瞳はどこも見ていないようだ。
大きな手がゆっくり伸びてくる。
「おいで」
引用:FINAL FANTASY Ⅶ REMAKE Traces of Two Pasts 344ページ
息を吹き返し、扉の影に隠れていたファズは、まずエルミナを蹴り飛ばした。
「お母さん!」
エルミナに駆け寄ろうとするとファズが迫ってくる。
(中略)
「どうしてわかってくれないんだ!」
ファズが叫びながら向かってきた。
引用:FINAL FANTASY Ⅶ REMAKE Traces of Two Pasts 348~349ページ
先述した通り、イファルナ&エアリスの逃避行を手引きをしたファズ。
その行動の根底には「惚れたイファルナと一緒に暮らしたい」という純粋な(いや、邪な?)恋愛感情がありました。
まあ、恋愛は自由なので、ファズがイファルナの事を好きになる事自体は問題ないと思います。
イファルナの夫(=ガスト博士)は既に死亡しているので、不倫になる訳でもないですし。
しかし、ファズの場合は恋愛感情が暴走してしまったのが良くなかった。
最終的には、現実と妄想の区別がつかないレベルのストーカーに変貌してしまいますからね。

本作を読めば分かることだが、ファズの一件はエアリスにとって恐怖体験そのものだな…

ゲーム内でティファ殿に話す口調からも、恐怖の度合いが窺えるであります!

ファズ襲撃から8年が経ったFF7本編の時間軸でも、エアリスは恐怖を払拭できていないようだ
念のため補足すると、ファズはイファルナが死亡したことを知っています。
しかしながら、その現実を受け入れられなかったのか、イファルナ死亡から7年の時を経て、当時14歳のエアリスの前に姿を現したファズ。
成長したエアリスに対してイファルナの面影を見出し、あろうことか襲いかかるという事件が発生します。
ストーカー、ここに極まれり。
…って感じで、もう完全に気が触れた変質者といった様相を呈しています。
ちょっと話が逸れますけど、FFシリーズでのストーカーと言うと、セフィロスとシーモアが有名です。
やたらとクラウドをつけ回す、もはや妄執の体現者とでも呼ぶべきFF7のセフィロス。
ユウナに求婚するあまりストーカー行為まで辞さなくなった、FF10のシーモア。
FF界隈のストーカーと言えば、このセフィロス&シーモアの二強という感じなんですよね。

場面によっては「クラウドの尻を狙うストーカー」にしか見えないセフィロス

主人公よりも先にヒロインの唇を奪うという快挙(?)を成し遂げたシーモア
しかし!!!
ここにきて、小説という媒体とはいえセフィロス&シーモアに並ぶんじゃないかという勢いで登場した、神羅カンパニーの科学部門社員・ファズ。
まさに、FF界の新星ストーカー。
14歳の少女に魔の手を伸ばす、イカれたサイコ野郎。
キモい。
とにかく、キモい。
しかし、そのキモさが癖になる。
キモさこそが、ストーカーに必須の素養である。
そのように思うのは筆者だけでしょうか?

褒めてるのか、貶してるのか、どっちでありますか?

愚問だな…
両方に決まっているだろう!!
このファズという人物ですが。小説内の描写を見た限りだと決してイケメンとかではないです。
…と言うか、多分ですけど不細工の部類だと思います。
ファズの容姿について、作中では“目も鼻も口も大きい”と述べられていますからね。
The・醜男
…といった顔貌を、ついつい思い浮かべてしま訳ですよ。
付け加えると、ファズは顔の各種パーツだけではなく身体も大きい反面、腕っぷしは弱いことが作中で示唆されています。
つまり、女性目線での外見的(あるいは肉体的)な魅力は乏しいタイプの男性ですね。

作中で「どうしてわかってくれないんだ!」と叫びながらエアリスに迫るファズは、この場面のウェッジを不細工にしたような感じをイメージしている
女性からモテる要素という意味では、まるで美点が見当たらないファズ。
しかし、そんな“モテない男性”だからこそ、美女から頼られて舞い上がってしまったのかもしれません。
この女、俺に気があるな…!!
…といった具合に、アホな勘違いをしたのでしょうか。
(多分だけど)女っ気のない人生で、恋愛経験も乏しかった(と思われる)ファズ。
そんな状況下で美女から頼られたら、ここぞとばかりに自尊心がリミットブレイク状態になるでしょうよ。
その証拠に、イファルナの騎士気取りで手の甲にキスするという、これまた地味にキモい描写があります。
「あなたが来るまで、どのくらい待てばいいの?」
「最悪、最終電車ですね」
言いながらファズはイファルナの手の甲に口づけをした。
エアリスは驚き、ファズと母親を交互に見た。
引用:FINAL FANTASY Ⅶ REMAKE Traces of Two Pasts 219ページ
でも、結局のところイファルナはファズに対して恋愛感情など抱いていない訳で。
むしろ、イファルナはファズに対して性的な意味での嫌悪感を抱いている節すらある訳で。
その証拠に、イファルナは衰弱状態で歩くことすら辛いにも関わらず、ファズが用意した参番街の家に身を隠すことについて拒絶しています。

イファルナはファズに感謝していたようだが「それとこれとは話が別」と思っていた様子が窺える
ファズからすれば、後に“愛の巣”となるはずだった参番街の家。
その家は、イファルナにとっては価値を見出せない存在だった。
この事実が、ファズとイファルナの関係性を如実に表しています。
作中でイファルナは善良な人物として描かれていますが、内心では「こんなキモい奴と一緒に暮らすとか無理…」などと思っていたんじゃないですかね。(多分)
「ファズ、どうしてるかな」
しばらく待ったが母親は答えなかった。
引用:FINAL FANTASY Ⅶ REMAKE Traces of Two Pasts 233ページ
「新しいおうちは?」
「私たちは住まないわ」
「ファズ、がっかりするね」
「そうかもね」
「ママはいいの?」
「私はエアリスがいればいいの」
引用:FINAL FANTASY Ⅶ REMAKE Traces of Two Pasts 236ページ

ファズとイファルナの関係性は、生理的嫌悪感の壁がいかに高いかを教えてくれる良い題材である(多分)
イファルナの騎士を気取っているものの、読者視点ではただの道化にしか見えないファズ。
しかし、ファズは諦めなかった。
ただの道化では終わらずに、今度はストーカーへとジョブチェンジするという意地を見せてきたではないか。
しかも、14歳のエアリスを脳内変換し、イファルナと妄想会話するという新規アビリティ(?)まで習得するときた。
ジェノバ細胞を注入されたセフィロス・コピーの如く、自ら創り出した幻影を見るにまで至るとは。
自分に都合の良い幻想に浸ろうとする姿は、FF7の主人公にも通ずるものを感じます。

「幻想」は確かに心地良いが、それは「現実」を直視していない証でもある
ある意味では、エアリス編の立役者とも呼べるファズ。
随分と濃いキャラクターであり、尚且つ現実の世界にも割といるタイプのストーカーなので、笑えるようで笑えなかったりします。
しかしながら、コイツがキモい男だからこそ、イファルナは参番街ではなく伍番街へと向かい、その結果として娘をエルミナに託す機会に恵まれたという解釈も可能です。
そう考えてみると、ファズは間接的にですけどエアリスの人生に絶大な影響を及ぼした人物だと言えるでしょう。
そんなファズによるストーカー行為の結末はネタバレ防止の観点から伏せますが、取りあえず筆者からコイツに言いたいのはコレだけです。
お前は一遍死んで、人生をやり直してこい。
FINAL FANTASY VII REMAKE Traces of Two Pasts(Amazon)
まとめ:ティファ&エアリスが好きなら必読の一冊である!

本作を読むと「やっぱりFF7のヒロインは偉大だな…」と心底思う
FF7の“ダブルヒロイン”として名高いティファとエアリス。
原作版FF7が発売した当初から“ティファ派”と“エアリス派”が存在するほど、FF7界隈でのヒロイン論争では人気を二分している二人。
そんなティファ&エアリスだからこそ、本作「Two Pasts」で描かれた新たな姿は興味深い。
幼さ故の愚かさ。
若さ故の未熟さ。
女性故の危うさ。
これらの“負の要素”が万遍なく描かれています。
ゲーム本編では欠点がゼロではないにせよ、善良かつ成熟している人間性の持ち主であるティファ&エアリスですが、彼女たちとて最初から現在のような人格ではなかったという訳です。
その前提で筆者個人の感想を書かせてもらうと、どちらかと言えばティファ編の方が面白かったですね。
本記事ではバレットに説教するティファが格好良いと述べましたが、そんなティファも最初から“格好良い”人物ではなかったので。
ニブルヘイム時代は、まさに“箱入り娘”といった感じだったティファ。
周囲から大切に育てられたことによる弊害なのか、無自覚ながらも我儘かつ短気なところがあったのは疑いない。
しかし、ミッドガルに移住してからは社会の荒波に揉まれ、立派な大人へと成長を遂げた。
庇護してくれる者がいない環境だからこそ、自活して逞しく生き延び、なおかつ自分を律する意識を忘れなかったが故に、ティファは精神的に大きく成長した。
だからこそ、初対面の大男に説教をかますだけの胆力が身に付いた。
…ということが小説内の描写で伝わってくる辺り、本作最大の見所は「ティファの精神的な成長過程」ではないかと思えてなりません。

おや?
つまり、管理人殿は“ティファ派”ということですかな?

いやいや、あくまで「Two Pasts」を読んだ上ではそう感じたというだけな!
別にエアリスが嫌いな訳ではないぞ!
(ブログ内でエアリス関連の記事も結構書いているし)
FF7はエアリスが死亡するからこそ“名作”との評価を得たのではないか?
そんな筆者の私見はさて置き…
繰り返しになりますけど、本作「Two Pasts」はティファ&エアリスが好きなFF7ファンであれば、買って損することは絶対にない一冊であると断言します。
Amazonや楽天で簡単に注文できますし、中古でも良ければワンコインで買うことも可能です。
小説という媒体が好きな人、あるいは苦手ではない人であれば、ティファ&エアリスのキャラクター性について理解が深まること間違いなしです。
この「Two Pasts」を手に取って読んだ人は、是非とも本記事のコメント欄にて感想を教えて頂けますと幸いです!
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました!
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